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KIRIN樽生はお得なのか、損なのか?

キリンブラウマイスター樽生

1. まえがき

KIRIN樽生サーバを入手して以来、お店の生ビールと一体どちらが得なのだろうかという疑問が湧いてきた。樽生が 1,520 ml で約 1,300円 であることから、店で飲むよりはお得であることはおおよそ予想はつく。とすれば、初期投資であるサーバーを「固定費」と見積、グラフを書いたとしても、必ず損益分岐点として交わるポイントができる(=モトが取れる)のは間違いなさそうだ。では、一体どのくらい飲み続ければモトが取れるのだろうか?

本調査は、ビールの提供様態による費用対容量、すなわち、コストパフォーマンスを明らかにすることで、ビールファンの財布を僅かでも暖かくすることを目的とする。


2. 諸定義

まずは、比較対象である飲み屋の「生」の値段を調べることにします。生といえば通常中ジョッキであるが... 中ジョッキの容量とは一体何mlなのだろうか? というわけで散々調べてみたが、「あなたはジョッキ派?瓶ビール派?」(探偵ファイルさんのサイト)にも書かれているように、どうも中ジョッキの容量は店によってまちまちというのが実態のようだ。我が国には計量法とか立派な法律もあるのに、中ジョッキを取り巻く実態は極めて胡散臭いとしか言いようのない状況なのである。

では、その中で最も一般的なサイズとは一体何 mlなのか?とさらに調べると、大勢は 435 ml ということのようだ(参考:キリン 一番搾り 中ジョッキ 1個 435mlアサヒ 中ジョッキ ドライ 435ml)。ビール:泡 = 7 : 3 が理想であるといわれているので、結局、賞味 435×0.7 = 305mlしか入っていない計算である。泡自体に残容積があるといえど、350mlの缶より少ないのは間違いないであろう...。ビール通の方ならご存知であろうが、銘柄が同じ限り、お店で「生ジョッキ」として出てくるビールも、自宅でちびちびと飲む「缶の生ビール」も、中身は寸分違わぬものなのである(店がごまかしたりしていなければ)。なのにこの値段の差は一体...。

[追記]ビールメーカー直営店では、中ジョッキを 700 ml としている店もあります。勿論その場合、量が多い分値段も高いのですが。

以上の条件を考慮して、様態毎の単価を次のように定義します。

中ジョッキ

前述のように、賞味 305 mlと仮定。価格は店によりバラつきはあるが、福岡近郊では 450円が相場であると仮定して計算します。

お店で頼む大瓶

(正)マークもついて安心の 633 ml。価格は同様にバラつきがあるが、福岡近郊では 500円ぐらい?

樽生

価格については、一応希望小売価格通りで計算します。固定費にあたる樽生サーバー本体は 3,129円(税込)、変動費にあたる樽生は 1,520 ml で 1,302円(税込)として計算。

コンビニ缶ビール

350 ml で 200円~230円程度だと思いますので、とりあえず 220円(税込)として計算します。

特売缶ビール

ディスカウントで購入したと仮定。350 ml 24缶のケースで 4,200円(税込) 前後だと思いますので、350mlあたり 175円(税込)として計算します。

自宅で飲む大瓶

ディスカウントで購入したと仮定。633 ml でおよそ 280円(税込) 前後だと思いますので、瓶の保証金(デポジット) 5円を除いて 275円として計算します。

3.計算機シミュレーション

ビール消費量と価格相関

前述の条件にて計算機シミュレーションを実施した結果を図示する(横軸の 30,000 ml とは、夏場に毎日 350ml 缶相当量を毎日飲むと仮定して 86日、すなわちほぼ一夏分に相当する消費量です)。

グラフを見て真っ先に目に付くのが、樽生どうこう以前に突出してお高い居酒屋の中ジョッキ。なんと、同じく居酒屋で頼む大瓶の倍以上というコストパフォーマンスの悪さ。これを見る限り、お店でジョッキ生ビールを頼むのは極めて勿体無く、同じ頼むなら瓶が圧倒的にお得でしょう。一杯100円とか、そういった特別なキャンペーンを行っているとき以外で、ジョッキ生ビールを飲むのは控えるのが賢明ですね。

さて、肝心の「樽生」と他のビールとの比較ですが...

まず、居酒屋で飲む場合と比較しましょう。最初に中ジョッキとの比較ですが... 樽生の圧勝! 樽生サーバという初期投資こそ必要ですが、4、5本ほど飲めば完全に逆転。この価格でお店の生ビール以上の旨いビールが飲めるのは実に驚異的なコストパフォーマンスといえるでしょう。続いて大瓶と比較すると、グラフの傾きから考えてほぼ同じコストパフォーマンスであると思われます。

では、ディスカウントストアのビールと比べてどうなのか? はい。明らかに樽生のほうが高いです。ひと夏で倍近くになります。ただ、その満足度から考えると当然樽生に軍配が上がりますので、缶ビールと樽生とをバランスよく併用するのが良いのではないかと思われます。それにしても瓶ビールのパフォーマンスのよさは恐ろしいものがあります。缶よりも安いんですね...。さらに、瓶はガラスでできているため、缶と比べ開栓後も味が落ちにくく、熱も伝わりにくい(=温まりにくい)というメリットもあります。633 ml を1回で飲み切れるのであれば、絶対に瓶がお得です。まとめ買いをせず、コンビニなどで1本ずつ買われる方は、コストパフォーマンスとして大差なく、圧倒的に旨い樽生に乗り換えたほうがひょっとすると良いかもしれません。

4. 検討結果

本調査を通じて以下の知見を得ることができた。

5. むすび

樽生を買うメリットとしては「ビールのクオリティが保証されており、芸術的ともいえる美味いビールが自宅で任意の量楽しめること」に尽きるといえる。繰り返しになるが、工場から販売店まで低温輸送が保証されており、二酸化炭素のボンベを利用して注ぐことで空気に触れずクリーミーな泡を作り出すという「芸術品」ともいえるビールを「自分の好きなときに好きな量だけ飲むことを可能とした」という点にこの商品の存在意義があるといえます。

「音楽聴くのがスキ」という人で、CDを買ったことがないという人はまずいないと思います。そういう意味で、この樽生システムは「ビールがスキ」という人には是非試して欲しい製品といえるでしょう。僅か CD 1枚分の価格で樽生サーバが買えることを考えると、ビール好きなら絶対に損な商品ではないと言えます。少なくとも、サーバの構造を見る限り、この装置がこの値段で供給されていること自体が奇跡とも言え、完全な KIRIN のファンサービス商品と言えるでしょう。

勿論、樽生のデメリットもあります。最大の問題点が「一番絞り」以外の品揃えが(実質)ないこと。さらに値引率が低く、大抵のお店では希望小売価格のままで売られていることから、通常の缶ビールのように気軽には楽しめないこと等々。いずれにせよ、このままの状態が続くようでは、一番絞りへの思い入れがない人にとっては樽生の存在意義は極めて薄いといえましょう。キリンには「ラガーや発泡酒もラインアップに揃える」「それなりの価格で小売される」など、もっと気軽に末永く使える商品となるように徹底して欲しいところです。

初版:2004.12.26

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